Aug 29, 2011

サンライズとサンセット

ある夜、テレビをつけたら"Before Sunset"をたまたま放送していたのでなんとなく観る。
なんとなく、というのは前作の"Before Sunrise"があまりに良くて夢を壊してしまうような続編は観たくない!と思っていたから。でも目の前の装置で流れていると、ついつい観てしまう。

結論は、本当に観てよかった!
なのでDVDを2枚とも購入。買ってすぐに前作を観ました。
前作を観たのは随分前。当時観た時の感動は薄れてしまっていたのは少し悲しかった。なんだか過去を振り返っているような、ほろ苦い気持ちになっていました。
この映画を再び観て、私がいかに学生時代に執着してきかを思い知りました。すべてが新しくて、知らないことばかり。すぐに恋に落ちて、すぐに感動をする。好きなことばかり考えていられる生活。いつもそのころに戻りたいって思っていた。
でも本当に戻れたら今の私はどう感じるのか? きっと想像よりつまらないでしょう。今は知識を得て、経験もたくさんした。それにその経験のおかげで自分の好きなもの、自分らしい物事がわかるようになってきた。「ときめき」なんてそんなに感じなくなった代わりに、「幸せ」を感じられるようになってきたと思う。主人公二人の会話を見て、そんなことを思いました。

"Before Sunset"は前作の味をまったく損なっておらず、2作の間に空いた9年間の真実味もあってすごく見ごたえがありました。本当に脚本が素晴らしい。
主人公のふたりと同じように、私も年齢と経験を重ねてきた。だからふたりの感情が私のなかで自然と再生されました。

"You come here to Paris, all romantic, and married"
これはジュリー・デルピー演じるセリーヌの台詞。字幕が秀逸でした。
「少年の心のままパリに来るなんて」
この言葉には二人の、そして普遍的な男女の関係性がよく表れています。
男性は夢のなかで現実を生きて、女性は夢のために現実を生きている。
30代にこの葛藤が最も顕著にでるのかも知れない。だって20代は女性も夢のなかだったから。
しかし女性は自分の機能の期限、つまり子供を危険性なく産める年齢の限界が迫ってきていることに気付いてしまうのが30代だと思う。
だから夢を見つつも、目の前にある現実を直視することになる。男性をその現実につれてこようとしても大変。そこから葛藤がうまれる。
考えれば考えるほどわからなくなり、迷宮に入ってしまいます。
きっとその迷宮が男女の関係の醍醐味でしょうけど。

しかし…イーサン・ホークの老け方には驚愕しました。
昔はあんなにかわいかったのに! 時間は残酷…
そしてジュリー・デルピーはさらに美しくなっていることに驚き。
実はジュリー・デルピーのことを昔はあまり好きではありませんでした。
ゴダールの映画で観たとき、なんでゴダールはこの人を選んだんだろうかと思ったくらいです。
アンナ・カリーナ的なかわいらしさがすごく好きだったのに、カーリーヘアーの薄い顔の女性なんて、と。
でも今は彼女の美しさがよくわかるようになりました。
彼女こそ内面から輝く美しい女性だな、と。

今、"2 Days in Paris"の続編になる"2 Days in New York"を撮っている様子。
パリジェンヌの彼女が撮るアメリカにすごく興味があり、今から公開がとても楽しみです。


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