
少し前のことになりますが、笠間日動美術館へ『佐伯祐三 鮮烈なる生涯』展を観に行きました。
初期の作品は模倣が多く、少しつまらなく思っていました。
でも進むにつれ、強烈なエネルギーを感じ始めました。
それが見事に佐伯自身に向かうエネルギーであるように見えましたが、それがとても痛々しかった。
そしてある時期から、彼が死に向かっていたことが絵から見えました。
絵の生気は全て失われていました。
『ロシア少女』は、死に向かう佐伯の内面を、鏡になって鑑賞者に見せてくれているように思います。
佐伯の心の闇があの目に映り、それを佐伯が描く。
ロシアの少女はモデルが終わり佐伯宅を去るときこう言ったそうです。
「不幸は重なるものよ。」
しばらくして佐伯はパリの地で亡くなり、娘も亡くなったそうです。
一緒に展覧会に行った父が印象的なことを言っていました。
「ひとつの展覧会でこんなにも濃く一人の男の一生を見るのは初めてだ。」
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